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COLUMN

求人を出す前に

三谷 健太

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「人が足りません」

経営者の口から、この言葉はよく出ます。募集をかけても応募が来ません。来ても続きません。だから今度はもう少し条件を上げて出そうと思っている、という話になります。

条件を上げること自体は、間違いではありません。ただ、その前に一度だけ確かめておくと、結果が変わる場合があります。

同じ言葉が、二つの状態を指している

「人が足りない」には、少なくとも二つの状態が混ざっています。

一つは、仕事の量に対して、単純に人手が不足している状態です。受注が増えました。事業を広げました。あるいは誰かが抜けました。これは採用で解ける問題です。

もう一つは、いまいる人の時間が、本来の仕事以外で消えている状態です。同じ数字を二度入力しています。月末に手集計をしています。ある手順が一人の頭の中にしかなく、その人が休むと止まります。この状態で人を増やすと、新しく入った人も同じ工程に吸い込まれていきます。半年後、また同じ言葉が出てきます。

厄介なのは、後者のほうが当事者から見えにくいことです。毎日やっている作業は、業務の一覧に名前がついていません。誰かが黙って埋めているからです。名前がついていないものは、数えられません。数えられないものは、足りない理由の候補に上がってきません。

そしてもう一つあります。採用は、費用のかかる手段です。 募集にかかる金額だけではありません。教育に時間が要り、その時間はたいてい、いちばん忙しい人から差し引かれます。定着しなければ、同じ費用がもう一度かかります。試す順番として、最初に来るものではありません。

増やしたい一人分の仕事を、先に書く

だからといって、募集を止める必要はありません。順序を入れ替えるだけです。

先に決めるのは、その一人に何を任せるのかです。ここが決まらないうちは、実のところ求人票も書けません。

書き出してみると、たいてい二種類が混ざっています。

一つは、手を借りたい作業です。 すでに手順が決まっていて、量が多いために回りきらない仕事がこれに当たります。

もう一つは、判断を任せたい領域です。 誰かに考えて決めてほしい、経営者や幹部が抱えたままの仕事がこれに当たります。

この二つは、求める人がまったく違います。混ざったまま募集をかけると、誰が来ても「思っていたのと違う」という感覚が残ります。応募が少ないことより、こちらのほうが痛い結果になりがちです。

そのうえで、書き出した仕事を一つずつ見ていきます。この仕事は、そもそも減らせないだろうか。 二重入力や手集計が混ざっていれば、それは新しい人に渡す前に、なくす対象です。渡してしまえば、その工程は今後ずっと会社に残ります。

工程の洗い出し方は、業務の棚卸しと仕組み化に書いています。

残ったものが、本当に一人分あるかどうか。そこで初めて、採用の判断ができます。

入社三か月後の一枚を書く

最初の一歩として、一枚だけ書いてみてください。

その人が入社して三か月経ったとき、何を任せているか。 作業の名前と、任せる判断の範囲を、具体的に書きます。「営業補助」では足りません。「見積の作成と、一定額までの値引きの判断」まで下ろします。金額の線は、実際の数字で入れてください。

書けない項目が残ったら、それは採用の課題ではなく、設計の課題です。そこが空白のまま人が入ると、三か月後、任せる予定だった仕事が任せられていない状態になります。本人の能力の問題として語られがちですが、多くの場合、渡す形が決まっていなかっただけです。

条件を詰める段になったら

任せる範囲が決まったあと、面接で何を確かめるか、入社後にどう引き渡すかは、それぞれ別に設計する必要があります。

賃金の水準、労働条件の明示、就業規則の整備は、社会保険労務士の領域です。求人票の記載事項にも法令上の要件があります。条件面を詰める段階になったら、そちらへ確認してください。 身近に社会保険労務士がいなければ、適切な方へおつなぎします。紹介にあたって報酬は受け取りません。

人を増やすかどうかを決める前に、まず、増やしたい一人分の仕事がそこにあるかを確かめます。

三谷 健太
PROFILE

三谷 健太

経済産業大臣登録 中小企業診断士。三重県菰野町を拠点に、北勢地域を中心とした中小企業を支援しています。

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